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カート・ヴォネガット・ジュニア Archive
67:『タイタンの妖女』
- 2007-05-16 (Wed)
- カート・ヴォネガット・ジュニア
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近年カートヴォネガットを好んで読む人の中5人に1人(何の根拠も無い唯の感覚値)がそうであるように、
わたしも『村上春樹の好きな作家の一人であり、彼の作品に多大な影響を与えた作家』というのを知って、著者に興味を抱いた。
(ちなみに、『タイタンの妖女』を読む前に、『スローターハウス5』と、『母なる夜』を既に読んだが、内容から察するに、『スローターハウス5』は『タイタンの妖女』の後に読んだ方がより楽しめそうだ。)
そして、最近になってこの作品を手にした人の多くがそうであるように、
わたしも、爆笑問題の太田光が大絶賛していたのをテレビで見たのがきっかけで、この本を読んだ。
本文に入る前、このような断り文から始まる。
『本書の中の人物、場所および事件は、すべて実在する。ただし、一部の談話および思考は、やむをえず著者の解釈で構成した。無辜(むこ)の者を保護するためにあえて名称を変えることはしなかった。無辜の者の保護は、全能の神が天国の日常作業の一部としてなされているからである。』
何かが何処かにつっかえたような気分のまま、物語への扉を開く。
最初に現れる場面は、『ウインストン・ナイルス・ラムファードの実体化現象』を見ようと群がる人々の様子。
無の中から一人の男と一匹の犬が出現する事を、『実体化』と言うらしい。
わたしはこの冒頭の部分で、早くも世界に馴染めなくなり、一週間もの間本を閉じてしまった。実体化って、何だ?? 何の前触れも無く、当たり前のようにその世界は広がっていたのだ。
一週間後、テーブルに置き去りにされた本を開いた。読んだ。
言葉がするすると染み込んで、鮮やかな映像となって現れる。
気づけば、どっぷり嵌っていた。
何故、一週間前はあんなに馴染めなかったのだろう。
本が変わった訳は無い。わたしが変わったのだ。
わたしが時間とともに変わった。
結果として、『タイタンの妖女』という世界を堪能し、感動することができた。
なんて幸せなのだろう。
そこには、「何故、一週間前は馴染めなかった本に、何の努力も無く、突然馴染むことができたのだろう」、「そういった変化にはどんな意味があるのだろう」という疑問も、それに対する考察も必要ない。
わたしがそうなったのには、思うほど大した意味は無いのだ。
そういうものなのだ。
そういう気持ちにさせてくれる本だ。
自分は何のために生きているのか。
「何か」が自分を操っているのだろうか。
「誰か」は自分の未来を知っているのだろうか。
それらの答えは、
もしかすると、「その通り」で、
もしかすると、「全く違う」かも知れない。
だけど、実際はそんな事よりも、
何かを愛し、誰かを愛し、
一つでも多く「幸せだな」って感じる事が出来る方が、よっぽど大切なんだ。
そう、思えた。
思ってるよりずっと、自分は無力でちっぽけなのだ。
見えない不安に震える暇があるのなら、見える幸せを深めたい。
そう思えた。
著者の、おおらかな優しさを感じる事ができる。
温かな涙を沢山流し、本を閉じる事ができる。
読みづらい部分(訳のせいなのか、著者の言葉選びのせいなのかは不明だが)は多々あるが、それを超える名言があちらこちらにあって心に残る。
宇宙、時間(時間軸)といったものが好きな人には、無条件にお勧め。
そうでない人でも、つい、難しく考えがちな人にも、勧めたい。
きっと肩の力が抜けると思う。
最後に、気に入った台詞を引用させて頂く。
「おれはなにもわるいことをしないで、いいことのできる場所を見つけた。おれはいいことをしているのが自分でもわかるし、おれがいいことをしてやっている連中もそれがわかってて、ありったけの心でおれに惚れている。アンク、おれはふるさとを見つけたんだ。」(ボアズの台詞)
「だれにとってもいちばん不幸なことがあるとしたら」と彼女はいった。「それはだれにもなにごとにも利用されないことである」(ビアトリスの台詞)
「人生の目的は、どこのだれがそれを操っているにしろ、手近にいて愛されているのを待っているだれかを愛することだ、と。」(コンスタントの台詞)
「単時点的(パンクテュアル)な意味において さようなら」
(ラムファードの台詞)
「天にいるだれかさんはおれが気に入っているんじゃないかな」(マラカイ・コンスタント)
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44:『スローターハウス5』
- 2006-09-09 (Sat)
- カート・ヴォネガット・ジュニア
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41:『母なる夜』
- 2006-09-09 (Sat)
- カート・ヴォネガット・ジュニア
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