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61:『猫と庄造と二人のおんな』
- 2007-02-15
- 谷崎 潤一郎
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またまた、谷崎潤一郎作品。
またまた、紅に金の梅が描かれた艶やかな装丁。
しかし、これは妖しくない!
怖くない!嫌らしくない!粘っこくない!
『春琴抄』や、『卍』、『刺青・秘密』を読んできて、それを谷崎潤一郎の世界と思っているから、この作品はやけに軽く感じる。読みやすく、楽しくて、二日で読み終えてしまった。合計すると3時間くらいだろうか。実際、128ページしか無いし、軽く読むのに丁度良い。小説が苦手と思う人にも勧められる作品だ。
物語は、女が女に宛てた、嫌味たっぷりの手紙から始まる。
また、どろどろした話が始まるのかしらと、読み進める。
しかし、それがどうも違うらしいと気づく。
「私あなたの家庭から唯一つだけ頂きたいものがあるのです。と云うたからとて、勿論貴女のあの人を返せと云うのではありません。実はもっともっと下らないもの、つまらないもの、・・・・・・・・・リリーちゃんがほしいのです。」
リリーちゃん。
猫である。
庄造が溺愛している、欧州種の猫である。
猫を愛し、猫に振り回される庄造。
庄造の愛を一心に受けるリリーに嫉妬する、二人のおんな。
題名が『猫と庄造と二人のおんな』であるのには、ちゃんと理由があるのだろう。
これが『庄造と猫と二人のおんな』でも、『二人のおんなと猫と庄造』であってもいけない。
腹が出て、どこか頼りなく、ぐずぐずしてばかりいるけれど愛嬌のある、マザコン男。それが、庄造。庄造は品子と結婚する前から、リリーを飼っていた。リリーが好きで好きで仕方なかった。時に品子はリリーに嫉妬した。しかし、庄造の気持ちが変わることは無く、そのまま数年二人は夫婦として過ごした。
しかし、品子は数年の結婚生活の後、姑に追い出されてしまう。姑と同じくらい勝ち気でしっかり者だったのが、いけなかったのだ。
後釜に入った福子は庄造の従妹で姑とも上手くやっている。しかし福子もまた、庄造がリリーばかり可愛がっているのが、段々気に入らなくなってくる。やがてリリーを追い出したいと思うようになる。
そこへ、冒頭の手紙が来る。
あの手紙は、追い出された品子が、後釜に入った福子へ宛てた手紙だった。夫婦であった頃こそ、品子はリリーを憎んだ事もあったが、独り身となった今は、逆にリリーが恋しくなったと言う。しかし、他にも魂胆がありそうだ・・・。
というお話。
猫の為に人格まで変わってしまう人間達の様子が、のびのび、コミカルに書かれている。
たぶん、谷崎潤一郎は猫が大好きなのだろう。
リリーのしぐさ、表情についての描写はとても詳細で、猫への深い愛情を感じる。どこか哀愁を帯びた目だとか、餌に飛びつく脚だとか、布団に潜り込んでくる時の匂いだとか、とにかくリリーは愛らしい。
愛猫家ならば、それら、猫の仕草がありありと浮かんで来て、ゆるんだ頬を戻す事は容易で無いだろう。
愛猫家でなくたって、きっと、猫の愛らしさに改めて気づく事ができると思う。
愛猫家ならば、ポール ギャリコの『猫語の教科書』や『ジェニィ』もお勧め。
どれも、思う存分、猫にメロメロになれる。
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